日本人の死因として、ガンの次に多い心疾患

 2019年6月7日,厚生労働省より、「平成30年人口動態統計月報年計(概数)の結果」が公表されました。人口動態調査は,出生,死亡,婚姻,離婚及び死産の人口動態事象を把握し,人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることを目的とした調査です。
心疾患
 今回の結果は,平成30年(2018年)に日本において発生した日本人の事象について集計されたものです。2018年の集計では,死因の第1位は,「ガン:悪性新生物(腫瘍)」,第2位は,「心疾患(高血圧性を除く)」でした。これまで同様,第3位は,2016年までは「肺炎」でしたが,2017年には「脳血管疾患」が第3位,2018年の調査では,「老衰」が第3位となっています。
主な死因別にみた死亡率(平成30年)

ホモシステイン値も原因している

 心臓病の方のための食事療法にはいろいろな種類があるようですが、ほとんどがコレステロール値を下げるために考えられたメニューのようです。

 しかし、実際問題としては、心臓病で最も重要な問題が血清コレステロール値というわけでもないのです。「血清コレステロール値」とは、脂質成分の一種であるコレステロールの血液中の濃度のことで、血管の壁に付着して動脈硬化を進行させる原因となる「悪玉コレステロール(LDL)」と、動脈硬化部分からコレステロールを除去する働きがある「善玉コレステロール(HDL)」があります。

 ここで削減すべきは悪玉コレステロールなのですが、それ以外にも危険因子が存在しており一緒に削減する必要があります。

 その一つがホモシステイン値です。「ホモシステイン」とは、心臓を動かす筋肉に血液を届けている大切な冠状動脈の壁をキズ付けるアミノ酸です。

 ホモシステイン値との関連性については、1969年にボストンの医師が先天的に血中ホモシステイン濃度の高い患者において若年期に動脈硬化や血栓性病変があることを発見され、多くの学者による研究結果より、ホモシステインが心疾患等の危険因子になり得ることが明らかになりました。

 なお、米国のある調査では、心筋梗塞の発作の約30%は高ホモシステイン値が原因によるものとの結果が出ているようです。

 このホモシステインを減らすには、葉酸、ビタミンが豊富な果物、青菜野菜、豆類、魚などを食生活の中心にし、α(アルファ)-リノレン酸
を適度に摂取すると効果的のようです。こうした食事とともに、抗酸化力を高め、血栓ができる危険因子を減らし、血圧や心拍を正常化させる努力を総合的に行うことが、本来の心臓病予防や治療に役立つことがわかっています。

 私自身も毎日摂取している、α-リノレン酸については、後でくわしく紹介させていただきます。

動脈壁に小さなキズが付くことから始まる

 多くの場合、心筋梗塞の発作は突然襲ってくるようであり、本人はその直前まで自分自身で体に異常を感じることは少ないようです。心筋梗塞では、全く胸痛などの前兆なしに起こる人が約1/3といわれ、梗塞前狭心症といって数日前、あるいは数時間前から胸痛を繰り返したのちに冠動脈が完全に詰まって心筋梗塞に至る人が約2/3といわれています。

 
心臓の冠状動脈は太い血管であり、いつも酸素が必要な心臓の筋肉に血液を届けています。心臓は、全身の血液を循環させるために動いている臓器で、いつもたくさんの血液で満たされているのですが、その当事者である心臓を動かすのに必要な栄養素は、冠状動脈という1本の動脈から届けられる血液だけで供給されています。

 この冠状動脈が詰まると、心筋に酸素が届かなくなり、心筋梗塞が発生してしまいます。
冠状動脈
 冠状動脈の障害は、動脱壁に小さなキズが付くことから始まります。小さなキズは誰でも付いてしまうものですが、高血圧状態が続くとさらにキズが大きくなってしまいます。拡張期血圧(低い方の血圧)が105以上ある人は、発作が起こる危険性が正常値の人に比べて4倍あるとする研究もあるようです。

 こういう場合の食用油の選択としては、血圧を下げるのに有効である良質なオリーブ油、α-リノレン酸が豊富な油、魚の油を普段の食事に摂り入れると良いでしょう。

 私たちが食べた油のほとんどは肝臓に運ばれて分解されます。その後、ホルモンのように働くエイコサノイドという物質に順次作り変えられてゆきます。エイコサノイドには、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどがあります。これらは血小板の凝集、動脈壁や気管支の収縮、弛緩、血液の粘度などに対してさまざまな調節を行う役割をしています。

 このとき、食べた油にリノール酸が多いと、トロンボキサンA2という名前のエイコサノイドが過剰に作られてしまいます。このエイコサノイドは、動脈を強力に縮める作用を持っているのですが、動脈が縮むと、心臓は思うように血液を循環させることができなくなり、高血圧を招いてしまいます。

 しかし、食べた油にα-リノレン酸が多ければ、トロンボキサンA3という違った種類のエイコサノイドが多く作られるようになります。こちらには、トロンボキサン2のような血管を縮める作用はありません。

 また、α-リノレン酸を食べることにより、一酸化窒素という動脈をリラックスさせる物質の量を増やすこともわかっているようです。

動脈に付いたキズが炎症を起こしてしまう

 動脈にキズが付いてしまうと、体はそれを修復しようとして反応を起こします。血小板や白血球が活動を始めるのです。これらは修復のための活動なのですが、同時に、血栓や炎症の原因にもなり得るものです。ですから、こうした炎症が慢性的に長引いてしまうと、心筋梗塞の危険因子は高まります。

 心筋梗塞の予防にアスピリンが効くと言われることがありますが、これはアスピリンがこうした炎症を減らすように作用するからです。そして、これと同じ抗炎症作用はα-リノレン酸にも期待することができます。さらに良いのは、薬物であるアスピリンと違って胃をキズ付けない点です。

 アスピリンが胃潰瘍などの粘膜傷害を引き起こすことは以前より知られています。低用量であっても同様に粘膜傷害を引き起こすことがあるようです。胃や十二指腸だけでなく、小腸や大腸に起きた例もあるようです。

動脈壁に悪玉コレステロールの残骸が堆積してしまう

 動脈の壁にプラークと呼ばれる余分なコレステロールなどの堆積物質が積み重なってゆくと、これも心筋梗塞の原因になります。このときに注意すべきは悪玉コレステロール(LDL)です。

 LDLは酸化により質が悪化すると、これを消そうとするマクロファージ(白血球の一種)がやってきて動脈壁内部にLDLを引き込み、消化しようとします。

 しかしながら、このときに残骸が残り、それが堆積してプラークを形成します。ですから、プラーク形成を阻むには、LDLを酸化から保護すれば良いことになります。
血管とプラーク
 LDLの酸化を防ぐのに有効な食用油は、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸です。オリーブ油にも含まれており、質の良いオレイン酸を摂取することを心掛け、果物や野菜を食生活のメインにすると、酸化されにくい血液を作ることができます。

動脈壁にプラークが形成されてしまう

 動脈壁内に酸化された悪玉コレステロール(LDL)がすでに数多く取り込まれ、プラークを形成し始めている場合、このプラークを小さくする努力が必要になります

 プラーク形成は、食生活などによっては、わずか3歳の子どもの動脈内でも形成が始まることが解剖によりわかっており、改善努力はいつ始めても早過ぎることはありません。プラークが大きくなれば、冠状動脈をふさいでしまうのですから・・・・・・。

 このときに必要なのが、善玉コレステロール(HDL)の助けです。HDLが適切な値にあれば、これが血液中からLDLを連れ去ってくれるからです。プラークの原因であるLDLを減らしたいなら、HDL値を高めて味方につけるべきです。

 LDL(悪玉)を減らしながら、HDL(善玉)を高める作用を持つ油は、一価不飽和脂肪酸です。ですから、やはり良質なオレイン酸を食べるようにすると良いですね。

 逆に、LDL(悪玉)を増やしながら、HDL(善玉)を減らしてしまうのが「トランス脂肪酸」です。また、単に油を避けるだけで、パンや麺類は食べ放題というような「低脂肪-高炭水化物食」という食事でも、同様にコレステロールの悪いバランスを促してしまいます。

 有害な油は減らすべきですが、良質な油まで食べないでいると、むしろ健康状態を悪化させてしまうということですね。

縮んだ動脈壁にプラークが蓄積してしまう

 喫煙の習慣、加齢、誤った遺伝子情報、不健康な食生活、運動不足などの不健康因子が複数組み合わさった生活を長年続けていると、冠状動脈の不健康度はますます高まねばかりです。縮んだ動脈壁にプラークが蓄積しまい、剥がれた血栓が血流にのって流されて、動脈を塞いでしまうと心筋梗塞が起こってしまいます。

 このような状態であることを病院で診断されると、血栓予防と称してアスピリンや血液を薄める薬が処方されます。

 しかし、これと同様の作用がα-リノレン酸EPADHAにもあることが、1970年代に発見されています。これは、クジラやアザラシの生肉を食用としていたイヌイット民族の高脂肪食を調査した結果にわかったことです。彼らの心臓病による死亡率は非常に低かったのです。彼らは、たくさんの脂肪を新鮮なうちに食べており、総摂取カロリーの約40%を脂肪分が占めていたのです。

 その後の研究で、これらの脂肪酸が血小板凝集を起こしにくくさせること、血液を固めるフィブリノーゲンの産生量を減らすことがわかっています。フィブリノーゲンは肝臓で産生される糖タンパクであり、約80%が血漿中に、残りが組織中に存在し、血小板にも存在することが知られています。

心臓発作を起こしてしまう

 例え、心筋梗塞の発作が起こったとしても、このときに命を落とすかどうかは、心臓がそのショックにどれだけ強く抵抗できるかにかかってくるようです。

 この時、正常な心拍ではなく、心室細動などの悪性不整脈が始まってしまえば、生き延びるチャンスは非常に低くなってしまいます。心臓だけの問題ではなく、全身に血液が回らなくなるからです。

 しかし、これまで述べてきたような、良質な油をうまく食生活に摂り入れる習慣を続けることにより、危機的状況でも心臓の鼓動を安定させることができるようになるといわれます。特に、α-リノレン酸が不整脈を防ぐことは、既に1980年代の動物実験で証明されているようです。また、α-リノレン酸は、血中の中性脂肪を下げる作用や、血栓ができるのを防止する作用、高血圧を予防する作用などがあることもわかっているようです。

 このように、今どのような段階にあっても、α-リノレン酸を中心に食生活を改善させていくことにより、心筋梗塞の危険因子を小さくしていくことができるとされています。自然な抗酸化成分、一価不飽和脂肪酸、α-リノレン酸を摂り、それとは逆に、飽和脂肪酸、リノール酸トランス脂肪酸を削減した食生活に改善することが必要です。

 α-リノレン酸が含まれているものとして、アマニ油、エゴマ油、シソ油などがあります。私をアマニ油を毎日かかさず食べています。あなたも早速試してみてはいかがですか。



トニー