【必須アミノ酸】
催眠効果のあるセロトニンをつくる
体内に入ったトリプトファンは、脳に運ばれ、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムとともに、鎮痛、催眠、精神安定作用のあるセロトニンという神経伝達物質をつくります。セロトニンは、朝の目覚めとともに放出されて、体が動き出す準備を整えたり、気持ちを平静に保ったりします。また、姿勢を整えたり、表情を豊にしてくれたりもする、とても大切な物質なのです。
セロトニンは、眠っているときにはほとんど、脳内には出てこないのです。太陽の光に影響されることによって、徐々に脳内で作り始められ、目覚めとともに分泌が始まります。体はそれに反応して活動のために準備に入るのですね。朝、セロトニンがたくさん作られることによって、スムーズな1日のスタートを切ることができるからです。
トリプトファンは、タンパク質の合成に関わる必須アミノ酸の一つであり、人体では作ることができないため、食事から摂取する必要があります。セロトニンの材料にもなるトリプトファンを摂取することで、セロトニンの合成が促進されることが知られています。
セロトニンの濃度を高めることで慢性的なアゴの痛みが軽減したという報告もあります。また、米国では天然の催眠剤として人気があるようです。
うつ病の原因は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足であるといわれており、セロトニンの濃度異常に関係があると考えられています。
若返り作用をもつ「メラトニン」の材料となる
さらにセロトニンは、脳の松果体でメラトニンというホルモンになります。
このメラトニンは加齢を遅らせることができるとされ、「若返り薬」としても話題を呼びました。
トリプトファン・セロトニン・メラトニンの関係は、トリプトファン ⇒ セロトニン ⇒ メラトニン となっています。
なお、免疫系に働きかけて抗ガン作用や心臓病に有効だとされ注目されています。また、アルツハイマーやパーキンソン病の改善に対する研究結果も報告されているようです。
米国では、トリプトファンはコレステロール値や血圧の調節、性的能力の高揚、更年期障害の軽減など、幅広い病状の改善に役立つという報告がされています。
その他にもトリプトファンには、不安や緊張をやわらげ、うつ症状を抑えたり、自然な眠りをもたらしたりする作用が知られています。
また、アルコール依存症の症状をやわらげる、などの働きがあります。
ビタミンB群といっしょの摂取が効果的
栄養補助食品として摂取する場合は、ビタミンB群(ビタミンB6,ナイアシン)や炭水化物を摂ると効率的だとされています。
なお、トリプトファンは、摂取後にセロトニンやメラトニンに変換されるまで時間を必要とするので、有効に活用するには朝食で摂取した方がよさそうですね。
柴田克己 先生による「トリプトファン代謝を支配するB群ビタミンの栄養状態 」が参考になりますよ。
参考:「トリプトファン代謝を支配するB群ビタミンの栄養状態 」(柴田克己)
睡眠障害やPMSにも・・・
過去の 臨床試験では、睡眠障害を持つ男性15名を対象にして、トリプトファンを1日あたり1gを摂取させたところ、睡眠障害が改善されたということから、トリプトファンに睡眠障害改善や不眠症改善効果が期待されています。
天然植物ハーブなど計12種もの快眠成分を凝縮配合した睡眠サプリメントで、ラフマ葉抽出物、グリシン、GABA酵素、トリプトファン、テアニン、クワンソウ、メリッサエキス、月見草、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシンなどを配合し、リラックスとともに睡眠の質を高めることができます。
また、月経前症候群(PMS)女性71名を対象に、トリプトファンを1日あたり6 g の量で17日間摂取させたところ、気分の変調や緊張、イライラなどが改善されたことから、トリプトファンにPMS改善作用も期待されています。
肝硬変の方は注意
長期間、ラットにトリプトファンを与えたところ、肝臓の脂肪に変化があらわれることがわかりました。
肝硬変の患者の場合では、長期的に摂取すると脳内にトリプトファンが増えてセロトニンが過剰になり、脳の機能が低下して昏睡状態に陥ってしまうという報告もあるようです。
そのため、肝硬変の治療食にはトリプトファンやチロシンが少なく、バリン、ロイシン、イソロイシンの多い食事が適しています。
肝硬変の患者で、脳にトリプトファンが増え、脳機能が低下したときには、症状を改善するためにトリプトファンの作用を妨げる働きのあるアミノ酸の投与が勧められています 。
関連項目
睡眠障害、アンチエイジング、集中力・記憶力向上、精神安定、月経前症候群(PMS)
トニー